スキットルと肉
著者:ゲンゾウ

鉄を育てる。Turk(ターク)フライパンと向き合う時間

「焦げ付く? それは、お前さんがまだ鉄と仲良くなってない証拠だ。」

便利な世の中になったもんだ。
テフロン加工だのマーブルコートだの、油も引かずに卵が滑るフライパンが溢れてる。
だが、そんなもんは数年で駄目になる消耗品だ。
わしに言わせれば、ありゃ「道具」じゃなくて「使い捨て容器」だ。

本気で美味い肉を焼きたいなら、選択肢は一つしかない。
「Turk(ターク)」の一枚鉄フライパンだ。
繋ぎ目なし、溶接なし。叩き上げられた鉄の塊。
こいつは重いし、錆びるし、手入れを怠ればすぐにへそを曲げる。
だが、きちんと育てれば、孫の代まで使える「家宝」になる。


鉄の「呼吸」を聞け

テフロンのフライパンは、食材と火の間に「壁」がある。
だから熱が伝わりにくいし、水分が抜けずにベチャッとなる。
対してタークは、油が鉄の微細な凸凹に染み込み、食材と一体化する。
火の力がダイレクトに伝わるんだ。

焚き火の上でカンカンに熱したタークに、分厚いステーキを放り込む。
ジュワアァァッ!! という轟音。
この音が聞こえなきゃ、肉は焼けない。
表面を一瞬で焼き固めるから、旨味(肉汁)が逃げ出そうとしても逃げられない。
外はカリッカリ、中はロゼ色の奇跡。
これは、テフロンじゃ絶対に逆立ちしても真似できない芸当だ。


黒光りする「歴史」を作れ

新品のタークは、まだ銀色で頼りない顔をしている。
こいつを使い込み、油を馴染ませ、煤で黒く染め上げていく。
これを「ブラックポット」なんて呼ぶ奴もいるが、要は「お前さんの味」を染み込ませる作業だ。

使い終わったら、洗剤なんて使っちゃいけない。
お湯とタワシでガシガシ洗って、火にかけて水分を飛ばし、薄く油を塗る。
この一連の動作が、キャンプの朝の儀式になる。
面倒くさい?
その面倒くささを楽しめるようになれば、お前さんも一人前の男だ。

まだ持ってないなら、覚悟を決めて買え。

Turk(ターク) クラシックフライパン

10年後、真っ黒に育ったこいつを眺めながら飲む酒は、間違いなく最高だぞ。
傷ひとつない新品よりも、傷だらけの古道具の方が美しい。
わしはそう信じている。



この記事を書いた人

ゲンゾウ

「不便を楽しめないなら、山になど来るな。」

便利すぎる現代社会に背を向け、ナイフ一本で森に入浸る頑固な古参キャンパー。

道具は「使う」ものではなく「育てる」もの。

傷の一つ一つに物語を見出し、手間暇かけることを至上の喜びとする。

口は悪いが、自然への敬意と初心者の安全には人一倍うるさい。