脳は嘘をつく、針は嘘をつかない。ホワイトアウトで「磁北」を信じる論理
著者:トウマ

脳は嘘をつく、針は嘘をつかない。ホワイトアウトで「磁北」を信じる論理

「お前の感覚は、バグだらけだ。」

[Summary] 結論:視覚情報が消えた時、唯一の真実は「針」にある

ホワイトアウト。
天地の区別すらつかなくなる白い世界で、人間はどうなるか知っているか?
「リングワンダリング(輪形彷徨)」。
真っ直ぐ歩いているつもりで、同じ場所をぐるぐると回り続け、やがて力尽きる。
これを防ぐ唯一の手段は、自分の感覚を捨て、物理的な「指針」に従うことだ。

Suunto (スント) MC-2 コンパス

スマホのGPS?
バッテリーが切れたらただの板だ。
極限状況で信じられるのは、磁石という原始的だが絶対的な物理法則だけだ。


[Details] 鏡の中の真実(ミラーコンパスの優位性)

なぜMC-2(ミラー付き)なのか。
それは「顔を上げて歩ける」からだ。

1. 照準を合わせる

カバーを開け、鏡に映る針と目標物を同時に見る。
これにより、コンパスを覗き込みながら、顔は進行方向を向くことができる。
通常のプレートコンパスでは、手元と前方への視線移動の間にズレが生じる。
その数度のズレが、1時間後には数キロのズレになる。
そのリスクを、この鏡が排除する。

2. 傾斜計と偏差補正

MC-2にはクリノメーター(傾斜計)がついている。
雪崩のリスクが高い「30度以上の斜面」を客観的に判断できる。
また、偏差(磁北と真北のズレ)を事前に補正できる機能もある。
現場での計算ミス=遭難だ。
計算は事前に済ませ、現場では針を追うだけにしろ。

3. グローバルニードル

北半球でも南半球でも使える針のバランシング。
世界中の山へ行くなら必須だが、国内でも針の動きの安定性が違う。
震える針を待つ時間は、吹雪の中では永遠に感じる。
ピタリと止まる針こそが、生存への時間を稼ぐ。


[Summary] 恐怖を飼い慣らすためのツール

視界が閉ざされた時、もっとも恐ろしいのは「方向感覚の喪失」から来るパニックだ。
「こっちの気がする」という曖昧な願望が、遭難者を崖へと導く。

Suunto MC-2の針は、お前の願望を否定するかもしれない。
だが、その冷徹な指示に従え。
感情を排し、ただ針が示す方角へ足を運ぶ。
その機械的な動作だけが、お前を安全圏へと連れ戻す。

以上だ。



この記事を書いた人

トウマ

「重力から解放されると、思考も自由になる。」

社会の喧騒から逃れるように森へ向かう、内向的なソロキャンパー。

地面にテントを張らず、ハンモックで宙に浮くスタイルを好む。

森の中で本を読み、珈琲を淹れ、ただ空を見上げる。

彼にとってキャンプはレジャーではなく、自分自身を取り戻すための精神的なデトックス・タイム。