不便さを愛せなければ、本当の夜は見えてこない。
[Problem] 電子ライターに「味」はあるか?
コンビニで100円で売っているライター。
確かに便利だ。
風が吹いても消えないターボライター。
確かに高性能だ。
だが、そこに「情緒」はあるだろうか?
カチッというプラスチックの軽い音。
ガスが切れたら捨てられる運命。
俺たちは、火をつけるという行為を、あまりにも事務的な作業にしてしまったのではないか。
[Affinity] オイルの匂いが呼び覚ます記憶
かつて旅した古い映画のワンシーンのように。
あるいは、場末のバーで隣に座った老人か。
ジッポを取り出し、蓋を弾く音。
シュボッという音と共に立ち上がる、柔らかい黄色い炎。
あの独特のオイルの匂いを嗅ぐと、俺はいつも、どこか遠くの場所にいる自分を思い出す。
便利さとは対極にある、しかし「生きている」火の温もり。
[Solution] 真鍮(ブラス)というタイムカプセル
俺が愛用しているのは、ケースの厚みが1.5倍ある「アーマー」タイプの真鍮モデルだ。
普通のZippoよりも重く、手に持った時のズシリとした存在感が心地いい。
そして何より、真鍮無垢(ソリッドブラス)であること。
最初は金ピカで恥ずかしいくらいだが、使い込むほどに酸化し、くすんだ渋い色に変わっていく。
それはまるで、自分の旅の時間を閉じ込めたタイムカプセルのようだ。
[Offer] 不完全な炎を操る喜び
Zippoは手がかかる。
オイルは揮発するから、こまめに補充しなきゃいけない。
フリント(発火石)も交換が必要だ。
風が強すぎれば消えることもある。
だが、その「世話」が楽しいのだ。
「カキン」
澄んだ開閉音を夜の闇に響かせる。
フリントホイールを親指で回す感触。
立ち上がった炎でタバコに火を点ける、あるいはランタンに種火を移す。
その一連の動作全てが、俺にとっては「夜」を始めるための神聖な儀式だ。
[Narrowing down] 自分の火を持つということ
誰かに火を借りるのではなく、自分の火を持つ。
それも、ずっと使い続けられる、自分だけの火を。
もしお前が、安易な使い捨て文化にうんざりしているなら。
この思い金属の塊をポケットに入れてみてほしい。
[Action] その音を響かせろ
夜、一人っきりのキャンプサイトで。
何も考えず、ただZippoを開閉する。
カキン、カキン。
そのリズムが、孤独な時間を豊かに彩ってくれる。
一発で火がついた時の小さな達成感。
それだけで、今の俺たちには十分すぎる救いだ。
