標高3000m、吹き荒れる風。
そんな環境でお湯が沸くのを待つ時間は、永遠のように感じる。
だが、SOTO WindMaster(ウインドマスター)を手に入れてから、私は風を恐れなくなった。
稜線という名の実験室
山において、風は常に敵だ。
体温を奪い、テントを揺らし、そして何より「火」を奪う。
平地のキャンプ場なら、タープの下で風を避ければいい。
だが、森林限界を超えた稜線上では、隠れる場所などない。
岩陰に身を潜めても、風は回り込んで襲いかかってくる。
一般的なシングルバーナーは、この風に対してあまりにも無力だ。
どれだけスペック上の火力が強くても、風に吹かれれば炎は横に流れる。
鍋底に当たるはずの熱エネルギーの大半が、空中に散って消えていく。
結果、いつまで経ってもお湯が沸かない。燃料だけが虚しく減っていく。
寒い。疲れている。早く温かいものが飲みたい。
その焦りは、やがて判断を狂わせる。
風防(ウインドスクリーン)を使えばいい?
強風の中でペラペラのアルミ板を立ててみろ。
押さえるのに手が塞がり、結局飛ばされて谷底へ消えていくのがオチだ。
山道具は、単体で完結していなければならない。
「条件が良ければ使える」道具など、ここではガラクタだ。
すり鉢の要塞
SOTO(新富士バーナー)が出した答えは、驚くほど論理的で、美しい。
WindMasterのバーナーヘッド(火口)を見てほしい。
平らではなく、すり鉢状に凹んでいる。
この独特の「凹み」の中に、火口が隠れているのだ。
横から風が吹いても、空気が頭上を通過していくだけで、凹みの中には入り込めない。
炎の根元が、風から物理的に守られている。
さらに、専用の「4本ゴトク」を使用すれば、鍋底とバーナーヘッドの距離は極限まで近づく。
風が入り込む隙間そのものを無くしているのだ。
着火してみればわかる。
「ゴーッ!」という力強い燃焼音。
横風を受けても、炎は決して流されない。
まるで、そこだけ無風空間であるかのように、真っ直ぐに鍋底を舐め続ける。
この「耐風性」は、魔法ではない。流体力学に基づいた計算と、日本の職人の精密な設計の勝利だ。
命の水を沸かす
このバーナーには「マイクロレギュレーター」も搭載されている。
ガス缶は、寒くなると内圧が下がって火力が落ちる(ドロップダウン現象)。
だが、レギュレーターがガス流量を一定に保つため、氷点下の環境でも火力が安定する。
風にも、寒さにも負けない。
実際、私のツアーでお客さんのバーナーが風で全滅した時、私のウインドマスターだけが涼しい顔で全員分のお湯を沸かしたことがある。
あの時の、凍えた体に染み渡るコーヒーの味。
お客さんの安堵した顔。
それが全てだ。
極限状態での一杯の温かいコーヒーは、単なる嗜好品ではない。
体温を上げ、心を落ち着かせ、生きて帰るための活力を生む「命の水」だ。
それを確実に提供してくれるWindMasterは、もはや単なる道具ではない。
それは、ザックの中に忍ばせる「保険」であり、信頼できる「パートナー」だ。
1グラムでも軽くしたいウルトラライトハイクでも、私はこれを持つ。
軽さを追求して性能を犠牲にするくらいなら、数十グラム重くても「確実に使える」方を選ぶ。
それが、生きて帰るための選択だ。
[商品リンク: SOTO WindMaster Stove]
