重厚な鉄鍋を育てる悦び。秋キャンプの肉料理とスキレットのシーズニング儀式
著者:ゲンゾウ

重厚な鉄鍋を育てる悦び。秋キャンプの肉料理とスキレットのシーズニング儀式

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いいか、本物のキャンプ料理を作りたいなら、アルミのクッカーやテフロン加工のフライパンなど今すぐ家に置いてこい。

秋の冷え込む夜、野外で肉を焼き、胃袋を満たすために必要なのは、ただ頑丈で、圧倒的な熱量を蓄えることのできる「鋳鉄(キャストアイアン)のスキレット」だけだ。

テフロンは使い捨ての消耗品だが、鋳鉄のスキレットは手入れさえ怠らなければ、100年経っても現役で働き続け、使うほどに油が馴染んで「焦げ付かない無敵の道具」へと育っていく。この道具と向き合い、自らの手で黒光りする皮膜を作るプロセスこそが、キャンプ料理の本当の醍醐味だ。本稿では、冷え込む秋の野外にふさわしい鉄鍋料理の道理と、無骨な一生の相棒であるLODGE(ロッジ) キャストアイアンスキレット 9インチを育てるシーズニング(油慣らし)の儀式について語る。

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なぜ秋キャンプの調理で鋳鉄スキレットが絶対的な存在なのか

秋の夜は風が冷たく、普通の薄いアルミフライパンだと、食材をのせた瞬間にフライパン自体の温度が急激に下がってしまう。その結果、肉の表面を瞬時に焼き固めることができず、中の旨味や肉汁がだらだらと流れ出し、パサパサの不味い肉を焼く羽目になる。

これに対し、ロッジのスキレットは厚さ約5ミリもの極厚の鋳鉄で作られており、一度温まると熱を大量に蓄え(熱容量の大きさ)、冷たい肉をのせても温度が下がらない。強い蓄熱が食材の芯まで均一に熱を通し、外はカリッと香ばしく、中はジューシーな最高の焼き加減を実現する。

この熱伝導と蓄熱の物理特性を理解せず、ただ「重いから」という理由で軽量フライパンを使う者は、自らキャンプ飯の旨さを放棄しているに等しい。

かつて私が10月の上高地でキャンプをしていたとき、薄手のクッカーでステーキを焼こうとしていた男がいた。強風でバーナーの火力が逃げ、冷たい肉を入れた途端に鍋の温度が死んでしまい、肉は焼けるどころか「煮えたような灰色」になっていた。私は自分のロッジのスキレットを十分に予熱し、彼の肉をのせてやった。ジューという豪快な音とともに、煙が立ち上り、瞬時に美しい焼き色がついた。彼は一口食べてその違いに言葉を失っていた。重さは強さであり、旨さの証明なのだ。

鉄鍋を焦げ付かない「黒真珠」にする3つの手入れ仕様

鉄のスキレットを使いこなすためには、科学的な手入れの道理(シーズニング)を理解しなければならない。それは以下の3つの手順に集約される。

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1. 洗剤を使用しない温水洗浄
使用後はまだ熱いうちにタワシと温水だけで洗うこと。洗剤は、鉄の表面にせっかく定着した油の保護膜(パティナ)を洗い流してしまうため厳禁だ。

2. 加熱による完全乾燥
水分は錆の最大の原因である。洗った後は必ず火にかけ、水分を100%蒸発させること。自然乾燥は錆を呼ぶアマチュアのやり方だ。

3. 薄い植物性油の焼き付け(コーティング)
乾燥後、冷める前に食用の植物性油を全体に薄く塗り、煙が出るまで加熱すること。これにより油が熱分解を起こし、鉄の表面に強固な炭化皮膜を構築する。

これらの手入れのプロセスを繰り返すことで、スキレットの表面は自然なノンステック(焦げ付き防止)仕様へと進化していく。

「LODGE キャストアイアンスキレット 9インチ」の設計と実戦力

ロッジは1896年の創業以来、アメリカの家庭やアウトドアで愛され続けている世界トップのキャストアイアンメーカーだ。

9インチという「黄金のサイズ」
ソロキャンプからデュオまでを完璧にカバーするのがこの9インチ(内径約22.5cm)だ。ステーキ肉がちょうど収まり、かつバックパックの背面やシートバッグの底に無理なく収まる、重量(約2kg)と実用性のバランスが最も優れた境界線がこのサイズである。

大豆油によるプレシーズニング済み仕様
ロッジの製品は、工場出荷時にすでに植物性油が焼き付け(シーズニング)処理されているため、購入してすぐにお湯で洗うだけで使用できる。しかし、私は新しいスキレットを手に入れたら、さらに自宅のガスコンロで一度、くず野菜を炒めて鉄臭さを抜き、自分仕様の油膜を1枚重ねることにしている。そのひと手間が、道具に「俺の相棒」としての魂を吹き込む。

経年変化を楽しむ一生モノの価値
プラスチックのコーティング加工がされたフライパンは、コーティングが剥がれればゴミ箱行きだが、鋳鉄のスキレットは使えば使うほど油膜が育ち、黒光りする「ブラック・ポット」へと化けていく。万が一、長期間放置して錆びてしまったとしても、金属タワシでガシガシと錆を削り落とし、最初からシーズニングをやり直せば、再び新品同様のパフォーマンスを取り戻すことができるのだ。

結論:手間をかけることを誇りとし、鉄鍋を育てよ

結論を言う。秋の夜、冷たい風の中で焚き火を囲み、じっくりと手入れを施された黒いスキレットで極上の肉を焼く。これ以上の贅沢な時間がどこにある。

「重くて面倒くさい」と道具の手間を避けるのは、自然の面倒くささと向き合う覚悟がない証拠だ。道具に手間をかけ、そいつを自分の手で育て上げていくプロセスを誇りとすることだ。

ロッジのスキレット9インチは、あなたがかけた愛情に、必ず最高の料理という結果で応えてくれる。黒光りするそいつの背中を見つめ、静かに油を馴染ませる。その無骨な儀式を繰り返しながら、自分だけの相棒を育て上げていく悦びを、秋の森で存分に味わってほしい。

物語の舞台に在るもの

100年使える、アメリカ生まれの重厚な鉄。熱を逃がさず、肉を美味くする無骨な黒い円盤を、あなたの手で育て上げよ。


この記事を書いた人

ゲンゾウ

「不便を楽しめないなら、山になど来るな。」

便利すぎる現代社会に背を向け、ナイフ一本で森に入浸る頑固な古参キャンパー。

道具は「使う」ものではなく「育てる」もの。

傷の一つ一つに物語を見出し、手間暇かけることを至上の喜びとする。

口は悪いが、自然への敬意と初心者の安全には人一倍うるさい。

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