鉈を持つと、急に偉くなった気分になる奴がいる。
太い枝を叩き割り、薪を荒く裂き、音だけは一人前に森へ響かせる。
だがな、お前さん。鉈は振り回すもんじゃねぇ。
鉈は、木と話すための道具だ。
わしが手に取るなら、Silky NATAみたいに、刃の重さと柄の握りが素直なものがいい。豪快さより、狙ったところへ刃が落ちること。そのほうがずっと大事だ。
刃物は、力を抜いた時に本性が出る
いい鉈は、力を入れなくても仕事をする。
手首を固め、肩で振り下ろすような使い方は下手だ。刃の重みを感じて、木目へ沿わせる。割るというより、開く。木が嫌がる方向へ無理に入れれば、刃は噛む。抜こうとして余計な力が入る。そこで怪我をする。
刃物で一番危ないのは、切れる瞬間じゃねぇ。
思い通りにいかなかった直後だ。
だから急ぐな。木を見ろ。節を見ろ。乾き方を見ろ。木口に入った割れの向きを見れば、どこへ刃を入れればいいか、だいたい分かる。
薪は同じ太さにしなくていい
キャンプの薪割りで、全部を同じ太さに揃えようとする奴がいる。
気持ちは分かる。並べた時に気持ちがいいからな。
だが焚き火には、細い薪も太い薪もいる。火を育てる細さ。熾火を保つ太さ。湯を沸かす勢い。夜を長くする静けさ。それぞれ役目が違う。
鉈は、その役目に合わせて木を分ける道具だ。
細く割りたい時は、刃を浅く入れて少しずつ開く。太めに残したい時は、木目に逆らわず、無理に追い込まない。節が強ければ、そこを避ける。避けるのは負けじゃない。道具を長く使う知恵だ。
手入れをしない奴に、刃物は応えない
使ったら拭け。
泥、樹液、水気。刃に残したまま袋へ戻すな。刃物は黙って錆びる。錆びてから慌てるのは遅い。
家に帰ったら乾いた布で拭き、必要なら薄く油を引く。柄に緩みがないか見る。刃こぼれがないか光に当てる。たったそれだけのことで、次に森へ入った時の安心が違う。
道具を大事にするというのは、飾ることじゃねぇ。
次もちゃんと働ける状態で休ませることだ。
物語の舞台に在るもの
薪割りや枝払いに使える鉈。力任せに振るのではなく、木目を読んで必要な分だけ割るための一本。
鉈を持ったからといって、森で偉くなるわけじゃねぇ。
木の都合を聞けるようになって、初めて少しだけ森に入れてもらえる。
Silky NATAは、その入り口に立つには悪くない一本だ。
