梅雨の山で怖いのは、雨そのものではない。
怖いのは、「まだ行ける」と思い込む時間だ。
肩口から水が入り、袖口が濡れ、ベースレイヤーが冷え始める。ここまで来ても、歩けているうちは危機感が薄い。だが体温は、気分とは関係なく落ちる。指先が鈍り、判断が遅れ、休憩が長くなる。そこから先は、装備の問題ではなく生存の問題になる。
だから結論から言う。レインシェルは「雨を防ぐ服」ではない。撤退判断を遅らせないための道具だ。
私が梅雨前に必ず確認するのが、ティートンブロス フェザーレインジャケット ユニセックス Teton Bros. Feather Rain Jacketのような軽量レインシェルだ。重要なのはブランド名ではない。ザックから迷わず出せる重さ、行動中に蒸れを逃がせる作り、そして濡れる前に着るという運用だ。
レインシェルは、早く着るほど強い
雨具を着るタイミングを間違える人は多い。
降り始めてからでは遅い。強くなってからではもっと遅い。体が濡れてから着るレインシェルは、すでに冷えた体を閉じ込めるだけだ。守るべきは、濡れる前のドライな層。つまりベースレイヤーと肌の間に残っている熱だ。
私の基準は単純だ。
空気が冷えた。風が湿った。稜線の向こうが白く潰れた。
この三つのうち二つが揃ったら、雨が落ちる前に着る。面倒でも着る。周囲がまだ歩いていても着る。山では多数決より、体温のほうが正しい。
濡れたら終わり、ではない。濡れたことに気づかないのが終わりだ
レインシェルの内側が湿る原因は、外からの雨だけではない。汗もある。登りで体を温めすぎると、内側から濡れる。だから雨具を着たら、歩く速度を落とす。暑いならベンチレーションを開ける。止まる前に一枚足す。
ここを雑にすると、どれだけ高価なシェルでも意味がない。
装備は魔法ではない。使い方を間違えれば、ただの薄い布だ。
撤退線を先に決める
雨の日の行動計画には、必ず撤退線を入れる。
地図上の分岐。小屋。林道に降りられるポイント。携帯がつながる場所。そこで何を判断するかを、出発前に決めておく。
「寒いと思ったら戻る」では弱い。
「手がかじかんでファスナー操作に手間取ったら戻る」
「休憩中に震えが止まらなければ戻る」
「シェルの内側が濡れ始めたらペースを落とし、次の分岐で下山する」
このくらい具体的でいい。
迷う余地を減らすことが、生き残る確率を上げる。
物語の舞台に在るもの
梅雨前のザックに常備したい軽量レインシェル。大事なのは「持っていること」ではなく、濡れる前に着る運用だ。
レインシェルを信じるな。
信じるべきは、濡れる前に動ける自分の判断だ。
雨具は、その判断を実行するためにある。
